2012年11月21日(Wed)
■ 『芦峅寺ものがたり 近代登山を支えた立山ガイドたち』鷹沢のり子 著
立山の麓にある芦峅寺の人々が、江戸時代から、どのように山との関わりを持ってきたかを辿ったのが本書だ。2001年刊行。
芦峅寺の人々は、江戸時代の山岳信仰の案内人、狩猟採取、劔岳開山後、学術登山隊などの山岳ガイド、ヒマラヤ遠征隊の縁の下の力持ち、そして富山県警山岳救助隊につながる民間山岳救助活動、山小屋管理業。南極越冬隊の活動隊員としても活躍した。
時代の変遷にしたがって、ガイドから救助隊へ、そして、山小屋管理人と仕事は変わったが、険しい山々と共に暮らす実力派の芦峅寺。
芦峅寺は、新田次郎の『劔岳 点の記』に登場するし、『ピッケルを持ったお巡りさん』の富山県警山岳警備隊創設時、民間救助隊として技術指導や活動そのものを支えた。またこの本では触れられていなかったが、『63歳のエヴェレスト』(2003年刊行)によれば立山エヴェレスト友好協会という組織が芦峅寺にあり、ヒマラヤのクムジュンと交流し、シェルパが何人も研修に来るらしい。
日本の登山史に不可欠な拠点である芦峅寺の歩みを、この本では俯瞰することができた。