2012年02月11日(Sat)
■ 『わたしのチベット紀行』渡辺一枝
著者の渡辺一枝さんは、中学生のころに川喜田二郎氏の『鳥葬の民』の写真をみてあんな風に自分も葬られたいと願い、「チベットさん」と呼ばれるほど、チベットに惹かれるようになったそうだ。
渡辺一枝さんは1995年にチベット高原をぐるっと馬で一周する旅行をして、その顛末は1996年に出た『チベットを馬でゆく』に綴られている。そして2000年に出版されたこの本はその続編と受け止めて良さそうです。
95年の旅行で知り合ったチベット人ガイドのツェワンと、その後も親交を重ね、この本ではツェワンの父の鳥葬、そして、チベットの人びとの弔い方の文化をつぶさに垣間見せてくれる。
また、チベットの医療は渡辺一枝さん自身が現地でかかった診療について書かれている。読んでいてややもするとその治療は呪術的にも思えた。けれども、みてもらいにゆくたびに先生に「心を平安に保ちなさい」といわれ、心に怒りを抱えている自分を認める様は、何か共感できるところがあった。
通りすがりの旅行者以上に、その地域の風習や文化に入り、良いところも悪いところも、見たままに記されている、深い本だった。