2012年11月07日(Wed)
■ 『山行記』南木佳士 著
2011年に出版された著書の登山に関するエッセイ集。著書は、芥川賞受賞作家であり、医師である。若い頃はカンボジアの難民緊急医療チームなどで働いたが、芥川賞受賞後、パニック障害とうつを発症。医師としては内勤の重度患者を受け持つポジションから、外来診療と人間ドッグを受け持つポジションへ変更した。
登山はそうして、時間ができ、また、うつ病の対策としてはじめたという。奥さんを伴って日帰りの山行を繰り返した体験、低山の森でも味わえる精神が落ち着く山歩きのことが淡々と綴られ、また、時には少し冒険とばかりに、数名の同業者とテント泊で、槍や豊島岳に訪れた体験も書かれている。
老齢の体力での、山歩きのよさがじんわりと爽やかな空気を生み出している。
先に読んだ、若さの体力の極限をめざすような登山はかっこいいなぁ、と、思うけれど、とてもおよびでない。少し肩の力を抜いて、体を動かすことで、「わたし」のバランスをとるような静かな山歩き、そんな山歩きを、わたしもしてみたいなと素直に思えた。