2012年10月30日(Tue)
■ 『翼を持ったお巡りさん』谷口凱夫 著
谷口、高橋という名前は山岳救助隊の本を読んでいるとよく見かけるのでどれが誰だか混乱しがちになるけれど、この本の著者は元富山県警の山岳救助隊の方。(もう一人、 10/14に放映された番組の谷口さんは岐阜県警の方なので、最初、ちょっと混乱した)。
富山県は劔岳や黒部峡谷という、とても山の初心者がうっかり踏み入れることのできない山岳エリアをカバーしているだけあって、先に読んだ長野県警の話よりも緊張感があった。
ところで、『梅里雪山』を読んだときもショックだったのだけれど、遭難現場に残された登山用品や貴重品などは、回収のため、季節を変えて立ち寄ると、かなり持って行かれてる、つまり盗難にあっていることが多いらしい。
ヘリ救助の場合は重量や天候の問題から本人の身ひとつで救出しなくてはならないこともあるので、最低限、救助前に貴重品は身に付けておくことも大事だと書いてあった。天候やちょっとした状況の違いで生死を分ける山の非情さよりも、そんな残置物を盗ってゆく人間の方が怖いと感じた。まぁ、遭難しそうな場所(バリエーションルート)であるほど、まさか回収に来ると思う人も少ないかもしれないが。
そんな風に貴重品を身に付けておくほか、また、救出される際もヘリの風圧は台風並みなので、ピッケルなどでスリップしないよう確保する、一度掴んだフックはたとえ電流が走っても手放さない(そのため心臓から遠い右手で掴むのが良い)など、救助される側にも覚悟とスキルが求められるみたいだ。
ヘリに無事乗れたとしても場所や天候によってはジェットコースター以上に激しい動きをすることもあり、乗ったからといって、快適さを求めるのも間違っているとあった。
ヘリタクという言葉があるくらいに登山者が安易にヘリの救助を要請するのが問題になっているけれど、この本を読むと、やはりヘリは安易に頼ってはいけないとし、ホバリングしたヘリへの搭乗は怖いと思った。マッターホルンの頂上からヘリにホイストされたイモトはほんと大変だったねぇ。