2012年10月18日(Thu)
■ 『空飛ぶ山岳救助隊 ヘリ・レスキューに命を懸けた男、篠原秋彦』 羽根田治 著
1972年から2002年まで、民間ヘリ会社から、日本アルプスへ山岳救助のヘリを飛ばした伝説的な人のノンフィクション。
この本を読むのは三度めくらいなのだけど、漫画『岳』の連載が終わってからは、はじめてだ。岳の連載中に、巻末に篠原氏を無断でモデルにしたことの謝罪文が掲載されていたけれど、改めて読んでみて、篠原氏の奥様が長野県警出身であることに気づき、これはあの謝罪文とラストは仕方なかったのかなと思ったりした。
だからといって、この本も、岳も、嫌いになるかといえば、そんな事はなく、やはりどちらもすごく意味のある話には変わりない。
いきなり感想が本に閉じた話ではないところへ行ってしまったが、篠原秋彦氏は、ヘリの操縦士ではなく、営業としてヘリの荷揚げ作業の受注、現場のコーディネート、事務手続きなどを一手に担いつつ、徐々に要請のあった山岳救助をパートナーの操縦士とこなしてゆくうちに不動の地位を築き上げた。
ともかく几帳面できれい好き。率先して現場に突っ込んでゆく。段取りは詳細に組むが臨機応変に覆す。あまりに臨機応変すぎて慣れない警察の若手は涙目になるほど。
いわゆる登山とは違うけれど、丁寧に準備し仕事し、そして突っ込んでゆき、現場で状況をすばやく計算し判断を次々くだし行動するというくだりは、プロを感じた。具体的お名前はここではあげないが、プロ登山家のあの人を思い出したりもした。
はじめて読んだときは数々の遭難事例に驚いたけれど、いまはその遭難救助にあたられた篠原氏の仕事ぶりに目がゆく。