2010年09月16日(Thu)
■ 暑さがようやく峠をこえた。
雨が降って、むしろ少し肌寒さも感じつつ、 ようやっと夏の間、ずっと手を着けようと思いつつ、 できなかったデスク周りの整理を始める。
■ 須賀敦子 静かなる魂の旅
2006年から2008年、BS朝日で放映された番組を、 再編集したDVDが『須賀敦子 静かなる魂の旅』というタイトルで9/9に出たらしい。 たまたま本屋で平積みになっているのを見かけ、一も二もなく、手に取ってしまった。
DVDの他、愛蔵本と称して、小綺麗な冊子が入っていた。 その冊子には、写真や、また、須賀敦子の縁のある人々のメッセージが入っていて、 その中でも、愛弟子と言われるジョルジョ・アミトラーノ氏の寄せた 「須賀さんの思い出」というエッセイがとても良かった。
エッセイには、いくつかのエピソードが入っている。 初めての出会いや、 一緒に翻訳の共同で行った時のこと、 また、須賀敦子の文体についてのちょっとした考察、 いろいろあるのだけれど、 特に、病床の須賀敦子の見舞いに行くとき、 花屋で花を買おうとして、 須賀敦子のイメージを店員に伝えようとして、 言葉をのんだたくだりは、 なんと説明したらいいのだろうか。
わたしは、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』で ジョバンニが、サザンクロスで降りていった青年と女の子と交わした、 「ほんたうの神様」の会話を思い出した。*1
須賀敦子 静かなる魂の旅---永久保存ボックス/DVD+愛蔵本
河出書房新社
¥ 5,040
宮沢賢治全集 (7) (ちくま文庫)
筑摩書房
¥ 1,050
*1 「静かなる魂の旅」ってずいぶん ベタなタイトルだけど、 でも、もし、「銀河鉄道の夜」と掛けて、 あえてこのタイトルにしたのならば、深い。 須賀敦子の信仰と文学は、ほんたうの神様を求めつつ、 人間はその思いを共有しきれないせつなさにあると思うので、 二重にも三重にも重なった深い層がここにある。