2009年06月07日(Sun)
■ 行政をHackせよ。
勉強会カンファレンス2009とは
勉強会カンファレンス2009は、IT系勉強会開催をしてる人、したい人の集まりで、勉強会を開くためのtips、それにまつわるtipsの情報交換や、開催者同士の交流を目的に開かれました。
わたしはそこで、「セッション2 勉強会と世界」という枠の中で「IT勉強会と行政 ~行政をHackせよ。~」というタイトルで発表をさせてもらいました。前半の内容は、IT系勉強会という文脈で憲法や法律を読んじゃおうという大胆な試みをしました。わたしは一般人で、決して法律家とか識者とか活動家(汗 ではないので、内心「憲法とか法律とか、うひゃー、こういう風に読んじゃってもいいのかなぁ。深くつっこまれても回答できないョ」と不安というか、「まぁ、とりあえず、投げてみるか。話はそこからだ」という気持ちでやりました。(いわばミュージシャンが憲法を作曲付けてライブで歌っちゃう感じ)。
資料はこちら『IT勉強会と行政(PDF)』。
以下はそのレポートとかセッション追記というか、そんな感じのものです。
勉強会の背景にあるもの~生涯学習の理念~
今回が第一回です。第一回だからこそ、わたしはそこで、みんなが勉強会を開く背景となる思想(ていうと重いんだけれど・汗)がいったい何に基づいているのか、その基本となるものを紹介したいと思いました。
それが、スライドの中に引用した日本国憲法、教育基本法、社会教育法です。
特に「生涯学習の理念」は重要だと思います。というか、これを初めて読んだとき(いつだか忘れたけれど)は、感動した!何度読んでも感動する。この感動を集まったみなさんと共有したかった(懇親会などで感想をうかがったら、ちゃんと共有できていたようで良かったです)。
国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
[教育基本法 第三条より引用]
学ぶことは、義務教育期間だけではなく、生まれてから死ぬまで、人の生涯を通して、よりよく生きる糧として、とても大切なことなのが、よくわかるのです。
自学自習
「自分がやりたいから」「たのしいから」というのはもちろん個人的な動機として、とても大切です。自分から自発的に、学びたいテーマをみつけ、情報をあつめ、理解して、そのこと自体を楽しむ。とても大切です。こういうのを行政では「自学自習」という用語を使うようです。
個人から、一歩踏み出して、みんなで勉強会をするというのは、たいてい「目的・テーマに賛同される方なら、誰でも参加してほしい。多くの人に参加してほしい」という思いがありますね。「わたし」だけでなく「わたしたち」になります。
「わたし」だけで自学自習するのではなく、「わたしたち」で自学自習する場が勉強会かなー、と、思います。
公共施設を使う
勉強会を一般的に開くときは、今回の勉強会では趣旨に賛同してくださった企業様に会場をお借りできましたが、自治体などの施設を利用することがよくあります。今回集った人々に、セッション2の時に「公民館など自治体施設を利用されてる勉強会の方」と挙手をしてもらったら、半数くらいの方が挙手をされていました。
自学自習の場として、施設を整備することは、教育基本法や社会教育法の中で、国及び地方自治体の任務として定められています。(公民館のほか、図書館や博物館、スポーツやレクリエーション施設も入ります)。IT勉強会も、どんどんこうした施設を利用するとよいと思います。
セッションでは触れられませんでしたが、2002年頃、わたしが参加させてもらっていたJava読書会は、今でも活動が続いていて、延べ10年(以上なのかな)、開催回数は100回を越えていますが、自治体施設を借りることによって、開催者の場所抑えの負担を軽減して、淡々と続けられていることによって、長年の活動を維持しているようです。
単純に「わたしたち」の自学自習の場として、公的施設を借りるのは、次の情報を用意すれば手続きがとれます。
- 勉強会名
- 主催者/申込者(氏名、住所、電話番号)
- おおよその参加者数
- 主たる目的(「(IT/プログラミング関連/コンピュータセキュリティ/Webサービスなど)に関する勉強会」、で大丈夫でしょう。あまり具体的に「LinuxカーネルHackの勉強会」と書いてもおそらく窓口の人は用語を理解できない・・・・・・。一般的な人が理解できるレベルの言葉を想定して書けばよいと思います)
勉強会の成果と社会還元(社会に対する勉強会のメリットを考えよう)
今回、発表をするのに最初、勉強会にとっての、行政(地方自治体)の施設を借りるメリットに重点をおいていました。今の地方自治体の施設の多くは、ネットワーク環境もありませんし、PCを使う際の電源タップも確保できないことが多く持ち込みになります。それをどう行政に説明して予算をとって施設を充実させてもらうか、勉強会開催者みんなで考えるのはどうかなぁって単純に考えていました。
しかし、生涯学習方面に明るい知人がいたので、事前に発表資料を見てもらったところ、「自分たちにとってのメリットを訴えるよりも、自学自習した成果をどう地域や社会に還元できるかを考えてほしい。今の行政の生涯学習はその方向を重視している」と指摘されました。
自治体などの施設を借りるときに、自分たちが快適に勉強会をするには、「そうかぁ、地域や社会に対しての勉強会の成果のメリットを説明するのも大切なんだ」と気づかされました。
社内勉強会のセッションで、勉強会という場を社内で作ろうとするとき、上司や会社に対して、勉強会を開く意味やメリットをどう説明するのか、ここが開催にこぎつけるためのひとつのブレークスルーポイントであることが取り上げられていたと思います(ごめん、ちゃんと全部は聞いてなかった。受付に途中までいたので)。つまり、「勉強会」が対外に対して、そのメリットが明文化できると、強みになります。
やはり、行政施設を借りる場合でも、同じことが言えるかもしれません。社会に対し、地域に対し、勉強会のメリットを説明できるというのは、勉強会のポジショントークとして大切かもしれません。最初に結論として、「行政Hackのコツ 世の中に対して何を貢献できるか説明する。それができればOK.」というのはそこです。
勉強会と行政窓口(勉強会のベクトル)
そこで、さらに突っ込んで、勉強会と行政のコミットポイントをその方に話を聞いたところ、どうやら、次のベクトルがあるらしいことがわかりました。それがスライドの「3.IT系勉強会と行政窓口」でまとめた内容です。
スライドでは、2、3、4、5のベクトル(方向性)があります。これは、レベル(段階)ではなく、ベクトルです。その点を注意してください。必ず、勉強会は段階を分で2、3、4、5の順で成長しなくてはならないということではありません。それぞれのベクトルでとどまって良いのです。また、ベクトルにとどまり続けることを強要することもありません。勉強会の成長・熟成に伴って、ベクトルが変わることもあり得ると思います。複数のベクトルを内包する勉強会もあると思います(複数のベクトルを内包って、言葉の使い方としてアリなのかわからないけど・汗)。
2.勉強会が単純に自学自習の場として公共施設を借りる
(これについては先に説明しました)。
3.勉強会がその成果をもって、地域社会に奉仕する・講習会を開く
この場合は、「社会教育関係団体」や「生涯学習団体」といった団体登録をすると、そういった活動が行えます。
よく、市民に対するパソコン勉強会などの「講習会」が広報誌に掲載されていますが、そうした講習会を開く団体(勉強会)です。
また、生涯学習に詳しい方から伺っているところ、市民や学生に「講習」する人々に対する講師としての研修活動にも参加できるようです。(ここら辺、講師の研修会をする立場なのか、講師の研修を受ける立場なのか、ちょっとよくわからない)。
あとから懇親会の席で伺った話なのですが、セキュリティ系の勉強会の方は、高校の先生方のIT勉強会に列席しているそうです。これが講師の研修会にあたるかわかりませんが、そうした活動を実際にされている勉強会開催者がいるんだ、と、感動しました。
4.勉強会・企業・行政が連携して、地域社会に奉仕する
たとえば、ホームレス支援や地域猫問題といった社会問題に対して、IT系勉強会がその勉強した成果をもって、企業や行政と連携して社会貢献するケースです。
第三者として、勉強会情報をみていますと、WebSig24/7さんがこうした活動に詳しそうな気がしますが、どうでしょう。(あとから気がついたのですが、WebSigさんも勉強会カンファレンス2009と同じ日に、勉強会を開催されていた!)
この場合は、市民活動センターやボランティアセンターといった行政サービス窓口にコミットすると情報やネットワークが得られるようです。(ようです、というのは、生涯学習に詳しい人から聞いた話で、わたしが実際にそうした活動をしていないので実体がよくわからないのです)。
5.勉強会・企業・行政が連携して、地域の産業・経済に貢献する
LOCAL(札幌)、しまねOSS協議会(島根)、東北デベロッパーズコミュニティといった勉強会が、おおよそ、このベクトルにあると思います。(直接知っているわけではないのでよくわからない ><)
これもまた聞いた話ですが、こうした活動をするときには、行政の年度政策(発表は広報誌などで行われます)などをチェックし、絡めそうな窓口を探す必要があるそうです。
勉強会カンファレンスに期待すること
わたしは経験していないのでわからないのですが、3、4、5のベクトルにあるIT系勉強会もたくさんありそうなので、今後、そうした勉強会の方に勉強会カンファレンスに来ていただき、お話してもらうことを期待します。
また、今回、発表させてもらったあと、よしおかさんが司会となり、会場の方にどんどん手をあげてもらって、自分たちが地方自治体施設を借りるときどうであったか、また、行政とコミットした経験などを語ってもらいました。これらの点はあとで整理して、MetaConでディスカッション・情報の整理を行うと良いでしょうね。
(問題を抱えている人は、どういうポジションで、何が問題なのか、何を悩んでいるのかを明記して、MetaConのディスカッションにスレッドをたてると良いと思います)。
さらに、セッション2で、会場から挙手をしてもらって話を伺っていたところ、「学校」と勉強会の連携、教育・研究分野とIT系勉強会の連携も、分野として大きくありそうですね。その点についてもディスカッションされていくと良いと思います。
会場から出た質問とその回答
回答には今回、追記をしました。
Q.会社の人で集って勉強会をする、複数社で連携して勉強会をするという場合は自治体施設を借りられますか?
A.会社は営利団体なので、その名前が前面に出ている場合は、自治体施設はちょっと厳しいところがあるかもしれません。行政施設は基本的に市民サービスなので。どちらかというと、商工会議所が適していると思います。(商工会議所は一般の勉強会よりも、むしろ会社の研修会などに利用される会場を提供するサービスをしています)。また、勤労福祉会館もよいかと思います。各施設に問い合わせてみてください。
Q.自治体施設は営利はだめとありますが、自治体施設を借りる場合、やはり会場費などの経費がかかります。そうした会場費などを、来場者から集めるのは大丈夫ですか。
A.営利目的を伴うものは、公民館、地区センターの会議室は基本的に利用できません。具体的には、テキストや書籍の販売、プロダクトの販売という行為はできません。また、入場料として利益を得るようなものも基本的にできません。(入場料という利益を得る場合は、施設を借りる料金が規定にしたがい、割り増しされるということがあります。施設ごとに規定が異なるので施設に問い合わせる必要があります)。純粋に会場費を集まった人からその場で徴収するという会費的なものは、大丈夫です。
収支は明朗会計で。
お金問題も、いろいろメソッドがたてられそうですね。勉強会としては、内部で取り決めて、対外的に収支を説明できるようにしておくのが大切かと思います。
感想
今回の「セッション2 IT勉強会と世界」を通して、本当にひとこと「IT勉強会」と言っても、さまざまなベクトルがあり、そこにたくさんの問題や課題があることがわかりました。とても大きな収穫でした。
また、発表をして、そのあと、何人かの人に、「このセッションは、本当にヒットポイントでした!まさにこのセッションが自分にとって問題でした!」という感想をいただきました。セッションをできて、本当によかったです。
ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。
追記
受付ダンドリスト記については、別途書きます。
■ リテラシ+学会
- 数学教育と情報教育の根底にあるリテラシー教育に関連のある研究発表を募集しています。
- おもしろそうだけれど、まず、このページ、「about」に該当するものがないのがちょっと残念。「情報リテラシー教育研究会とは」って説明の一文が欲しい。数学教育学会の分科会みたい。数学教育学会に属してない人でも参加可。
- シンポジウム「神経科学リテラシー」 - 日本認知心理学会 イベント情報
- 神経科学のリテラシらしいけれど、演目を見ると「社会」というのが出てきていて、リテラシを語る際、「社会」を外すことができなさそうなのが、興味深い。
- 科学技術社会論学会 (Japanese Society for Science and Technology Studies) - シンポジウム「これからの科学リテラシーを考える」
- 科学リテラシー。教育と結びつけている。東京大学生産技術研究所。
- 「市民とメディア ~メディアリテラシーと情報発信」
- 日本教育メディア学会のシンポジウムらしい。該当するシンポジウムの公式ページをうまく発見できず、PDFにそれらしきものを見つけた。
- メディアリテラシ+教育という観点
- 第56回日本図書館情報学会研究大会シンポジウム記録 情報リテラシー教育と図書館
- リテラシーと教育と図書館という観点
- 市民として身につけるべき科学リテラシー
- "理科教育の在り方や,誰でもが身につけるべき科学技術リテラシーが注目されている"
- 理科教育+科学リテラシ
リテラシ学会が欲しい。と、思ったけれど、まぁ、ざっくり分類すると、いまは「情報(インターネットを通じた情報)リテラシー」と「科学(サイエンス)リテラシー」と、二つの系統で、前者は、教育、数学教育、図書館情報、社会学(?)、という分野で、後者は、科学教育という分野で議論されているのかな。