2013年09月23日(Mon)
■ 『カブールの本屋 アフガニスタンのある家族の物語』 アスネ・イエルスタッド 著/江川紹子 訳
男女平等思想の行き届いたノルウェー人の女性ジャーナリストが、2001年頃、アフガニスタンのインテリ家庭に滞在取材して書いた本。
家庭の主人は、英語も話せ、政府の発禁本でもアフガニスタンの歴史や思想を扱ったものなら価値を見出し隠し持ち、裏で商いするような先進性を持った人物なのだが、一方で第二夫人の幼妻を娶ったり、家父強権で妹や娘の嫁ぎ先について決定を下し、息子を学校にやらず店で働かせるなど、風習の常識かもしれないが、人権希薄な振る舞いも行う。
最近のニュースでインドで嫁入り前の娘が階級の違う男性と駆け落ちし、それを追いかけて二人ともを娘の親兄弟が殺してしまう、家庭の名誉を守るための名誉殺人という事件があったが、アフガニスタンでも同じようにあるらしい。この本では、たった一度デートをしたら兄弟に殺されてしまう娘の話が出てきたし、それ以前に手紙のやり取りをするだけでもふしだらとされ暴力で抑制される怖い話があった。
女性の不自由さの問題だけではない。子どもの教育でも同じように驚くことが書かれていた。政教分離が出来ないままの教育で、イスラム教の教えを暗記して来ない場合の鞭打ちや、軍が教育に強く影響を与えている状況下でのテキスト(算数の問題が、銃の球の数とその球で何人殺せるかの計算!)など。それが昔の話ではなく今世紀に入ってからの話なのだから、驚いてしまう。
この本だけを読んで、アフガニスタンやイスラム社会を理解したとするのは安易過ぎるし、正しくはないだろう。イスラムの教えなのか、それとも家父長が強権を握る文化のせいかわからないけれど、罪や穢れを赦さない文化がある。 その中で女性や子供、貧しい者は疲弊してゆく。
タリバンを代表とするイスラム過激派を欧米先進国が軍事力で抑止するだけでは太刀打ちできない風習や文化がそこにあるということは、理解できた気がする。